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民法改正⑦ 遺留分制度の見直し

⑴ 遺留分を侵害された者は,遺贈や贈与を受けた者に対し,遺留分侵害額に相当する金銭の請求をすることが
  できるようになります。


  現行制度では、
  遺留分減殺請求権の行使によって相続財産の共有状態が生じてしまいます。  
  例えば、家であれば相続人全員の共有状態となります。  
  この状態では、現在、対象の家に居住していない相続人からの要求があれば、その家に居住している相続人は
  家の持ち分の一部を明け渡す必要が出てきてしまい、居住できなくなることがあり得ます。
 
  そこで改正法では、遺留分減殺請求によって生じる権利は金銭債権とすることとし、上記の例で言えば、
  家の持ち分の一部そのものではなく、持ち分に相当する金銭債権での明け渡しでもよいことになります。
  これは、特定の者に事業承継させたいといった要望にも応えられるものにもなります。

 


⑵ 遺贈や贈与を受けた者が金銭を直ちに準備することができない場合には,裁判所に対し,支払期限の猶予を
  求めることができます。
  遺留分減殺請求権の行使によって生じる共有割合は,目的財産の評価額等を基準に決まるため,
  通常は,分母・分子とも極めて大きな数字となります(持分権の処分に支障が出るおそれがある)。
  そこで改正法では、その金銭を用立てるために必要な期限の猶予を裁判所に求めることができるように
  なります。


(1)・(2)ともに、2019年7月1日からの施行になります。

2018年12月26日

民法改正⑥ 特別の寄与の制度が創設されます。

相続人以外の被相続人の親族が無償で被相続人の療養看護等を行った場合には,相続人に対して金銭の請求をすることができるようになります。

現行では、相続人以外の者(例えば相続人である夫の妻)は,被相続人(例えば夫の両親)の介護に尽くしても,相続財産を取得することができません。

それでは余りにもということで、
改正後は、相続開始後,例えば介護につくした相続人である夫の妻は,相続人(夫や他の相続人)に対して,
金銭の請求をすることができるようになり、介護等の貢献に報いることができ,実質的公平が図られることに
なります。

 

2019年7月1日施行です。

2018年12月25日

民法改正⑤ 法務局に自筆証書遺言書を預けられるようになります

自筆証書遺言を作成した方は,
法務大臣の指定する法務局に遺言書の保管を申請することができるようになります。


※作成した本人が遺言書保管所に来て手続を行う必要があります。
※保管に要する費用が発生します。

 


遺言者の死亡後に,相続人や受遺者らは,全国にある遺言書保管所において,
遺言書が保管されているかどうかを調べること(「遺言書保管事実証明書」の交付請求),
遺言書の写しの交付を請求すること(「遺言書情報証明書」の交付請求)ができ,
また,遺言書を保管している遺言書保管所において遺言書を閲覧することもできます。


※遺言書保管所に保管されている遺言書については,家庭裁判所の検認が不要となります。

※遺言書の閲覧や遺言書情報証明書の交付がされると,遺言書保管官は,他の相続人等に対し, 

 遺言書を保管している旨を通知します。


2020年7月10日施行です。

2018年12月25日

民法改正④ 預貯金の払戻し制度の創設

預貯金が遺産分割の対象となる場合に,各相続人は,遺産分割が終わる前でも,

一定の範囲(例えば生活費や葬儀費用を引き出したいなど)で預貯金の払戻しを受けることができるようになります。

ただし金額には上限が設けられます。

 

2019年7月1日施行

2018年12月24日

民法改正③ 婚姻期間が20年以上の夫婦間における居住用不動産の贈与等に関する優遇措置

婚姻期間が20 年以上である夫婦間で居住用不動産(居住用建物又はその敷地)の遺贈又は贈与がされた場合に
ついては,原則として,遺産分割における配偶者の取り分が増えることになります。


現行では、
贈与等を行ったとしても,原則として遺産の先渡しを受けたものとして取り扱うため,配偶者が最終的に取得する
財産額は,結果的に贈与等がなかった場合と同じになる。
(被相続人が贈与等を行った趣旨が遺産分割の結果に反映されない。)


しかし、改正法では、
被相続人の意思の推定規定を設けることにより,原則として遺産の先渡しを受けたものと取り扱う必要が
なくなり,配偶者はより多くの財産を取得することができる。
(贈与等の趣旨に沿った遺産の分割が可能となる。)


2019年7月1日施行です。

2018年12月24日

民法改正② 配偶者居住権の新設

配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に,

配偶者は, 遺産分割において”配偶者居住権”を取得することにより,終身又は一定期間,

その建物に無償で居住することができるようになります。

被相続人が遺贈等によって配偶者に配偶者居住権を取得させることもできます。

2020年4月1日から施行されます。

2018年12月23日

民法改正① 遺言書の方式が緩和されます

平成31年(2019年)1月13日から、遺言書の方式が緩和されます。


現行では、遺言書に添付する財産目録に関しても全文自筆で作成しなければなりませんでしたが、
法律施行後は、自筆でない財産目録を添付して自筆証書遺言書を作成することができるようになります。


(新民法968条関係)

2018年12月22日

遺言書に押す印は実印でないとダメなの?

遺言書に押す印については、実印でなくとも、認印、拇印、指印でも有効です。


ただし、専門家は、実印で押すことをすすめています。


遺言書に印を押す目的は、その遺言書が本当に本人が書いたものであることを意思表示するためです。


ですから、あとに問題を残さないためにも、実印を用いることをおすすめします。


また、シャチハタでの押印でも大丈夫かという議論がありますが、シャチハタは経年によって線が太くなったり、
滲んだり、時が経つと薄くなったり(あるいは消えてしまったり)ということが指摘されています。
法律上、印の種類が規定されていないと言っても、あくまでも私見ですが避けたほうがよいかと思います。

2018年12月21日

裁判所の行う『検認』とは何ですか?

遺言書(公正証書による遺言を除く。)の保管者又はこれを発見した相続人は,遺言者の死亡を知った後,
遅滞なく遺言書を家庭裁判所に提出して,その「検認」を請求しなければなりません。


また,封印のある遺言書は,家庭裁判所で相続人等の立会いの上開封しなければならないことになっています。


検認とは,相続人に対し遺言の存在及びその内容を知らせるとともに,遺言書の形状,加除訂正の状態,日付,署名など検認の日現在における遺言書の内容を明確にして遺言書の偽造・変造を防止するための手続です。

 

遺言の有効・無効を判断する手続ではありません。
~ 裁判所のホームページより引用 http://www.courts.go.jp/saiban/syurui_kazi/kazi_06_17/index.html

 

遺言書が検認されると、”検認されたことの証明”が記された紙が遺言書に付されて、申立人等に戻されます。


裁判所の検認には別途申し立て費用などがかかります。

2018年12月20日

遺言書によってどのようなことができるの?

遺言書によってできる主な内容は次の通りです。


〇 法律上婚姻関係のない男女の間に生まれた子(非嫡出子)の認知
〇 遺産分割方法の指定
〇 遺贈・寄付行為
〇 相続人の廃除と廃除の取り消し
〇 未成年後見人の指定、未成年後見監督人の指定
〇 遺言執行者の指定、指定の委託
〇 祭祀承継人の指定
などです。


なお、個人的な感想などは法的な効力はありませんので、遺言書の最後に『付言事項』として書くか、
遺言書とは別に手紙やエンディングノートに記載されることをお勧めします。

2018年12月18日

遺言書通りに遺産を分けなければいけないの?

遺言書の内容については、被相続人のご意志を尊重しなければなりません。

しかしながら、相続人全員が同意・承諾すれば、遺産の分割割合は話合いで決めることもできます。

 

ただし、利害関係ある第三者(受遺者など)がいれば、相続人全員の他にその方の承諾も必要ですし、
遺言執行者がいれば、さらに遺言執行者の承諾も必要となります。

 

また、その際には最終的な合意内容を遺産分割(合意)協議書にして残しておくことをお勧めします。

 

2018年12月18日

先に書いた遺言書の一部だけを変更する方法は?

遺言書は日付の新しいものの方が優先されることが原則です。

ですから、変更したい部分だけを新しい遺言書に書けば、その部分に関しては反映されます。

 

先に書いた遺言書と新しい遺言書の間で、内容の矛盾した部分がある場合には、その部分を取り消したとみなされます。

 

が、

 

遺言書は先立つ者が、遺された者のことを思って書くというのが普通ですよね。

 

ですから、死後に遺言書がいくつも出てきて、その内容を精査することで煩わしい手間を掛けさせないためにも、

 

『先に書いたの遺言書の内容(の全部または一部)は変更し、△△△とする。』というように、前の内容が変更されたことが一目見てわかるように記入することをおすすめします。

 

2018年12月16日

先に書いた遺言書を撤回する方法は?

先に書いた遺言書が公正証書遺言書の場合には、新たな遺言書で撤回する必要があります。
※公証役場にも保管されているので、自分で保管している遺言書を破棄するだけでは撤回できません。
その際、異なる形式(自筆証書遺言など)の遺言書(日付注意)でも撤回することができます。
新しい遺言書に『〇〇年〇〇月〇〇日に作成した公正証書遺言書は撤回する。』旨を明記をしておきましょう。

 

先に書いた遺言書が自筆証書遺言の場合は、その遺言書を破棄することでも、新たに遺言書を作成し、
その中で『〇〇年〇〇月〇〇日に作成した遺言書は撤回する。』旨を明記することでも撤回することができます。

 

2018年12月16日

自筆調書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言とは何ですか?

<自筆証書遺言>

自筆証書遺言(じひつしょうしょいごん)とは、
全文、日付、署名を自筆にて行い、押印することにより自分で作成する遺言書です。

最近は市販の書籍などでも『自筆調書遺言の書き方』をテーマにしたものがありますが、
自筆証書遺言書を残す場合、正しい書き方・様式でないと無効となることもあるため

注意が必要です。

遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、
その検認を受けなければなりません。


<公正証書遺言>

公正証書遺言(こうせいしょうしょいごん)とは、公証役場で公証人に作成してもらう

遺言のことです。

遺言内容が無効にならないように公証人と確認しながら作成しますので、

最も確実であるといえます。
また、遺言書の検認は不要ですので、残された相続人の手間を省くこともできますので、
専門家が最もお薦めする方法です。



<秘密証書遺言>

遺言内容を秘密にしつつ公証人の関与を経てその存在のみを証明してもらう方式です。
証人2名と手数料の用意が必要です。
証人の手配が難しい方には、公証役場で証人を手配してくれる場合もあります(別途証人の日当が発生)。


代筆やワープロでの作成もできますが、遺言者の署名と押印は必要です。
その押印と同じ印章で証書を封印します。
遺言書の入った封筒は遺言者に返却されます。


自筆証書遺言に比べ、偽造・変造のおそれがないという点は長所であるが、

紛失したり発見されないおそれがあるので、
親族や信頼できる知人・専門家あるいはエンディングノートなどを活用して

遺言書が存在することは伝えておいたほうがよいと思います。


遺言書の保管者は、相続の開始を知った後、遅滞なく、これを家庭裁判所に提出して、
その検認を請求しなければならない。

2018年12月13日

遺言書の種類は何種類あるの?

遺言書には大きい分類と小さな分類があります。

 

大きな分類は、『普通方式』と『特別方式』の2種類です。

 

『普通方式』には、『自筆証書遺言』・『公正証書遺言』・『秘密証書遺言』の3種類があり、

『特別方式』には、『危急時遺言』・『遠隔地遺言』の2種類があります。

 

『特別方式』は、普通方式遺言ができない特殊な状況下においてのみ認められる略式方式ですので、

 

一般的には『普通方式』で遺言書を作成する場合が多いです。

 

2018年12月12日

私は遺言書を作成した方がいいの?

遺言書を作成したほうがよいかは、ご本人様のお考えや置かれている状況にもよるので”この人”と断定することは難しいのですが、以下に当てはまる方はご検討いただいたほうがよいかと思います。


1.相続財産が不動産だけで現預金がない(少ない)人

 

2.離婚経験がある人  

 

3.子供のいないご夫婦・カップル(配偶者(パートナー)の権利を守るため)

 

4.相続人に病人や働けない方がいる。残された家族の権利を守るため

 

5.なにかしら不仲な状況がある人


いずれにせよ、遺産・相続で揉めて人間関係を悪くしたくない、

あるいは、そうなって欲しくないと思っておられる被相続人になりうる方は作成しておくことを

お勧めいたします。

2018年12月11日

遺言書は何歳から作成できるの?

15歳以上であれば、遺言書を作成することができます。 しかし、遺言者が意思能力を欠いている場合は、作成しても無効となります(民法963)

2018年12月11日

「遺言」の読み方について

「遺言」と書いて、「ゆいごん」と言ったり、「いごん」と言ったりします。

 

どちらが正しいのでしょうか? 正解は、両方正しいです。

 

一般的に使われているのは「ゆいごん」ですね。


それに対して「いごん」は法律に係わる職業の人達が使うことが多いようです。


ただし、講演会などで一般の方を対象に法律家がお話する時には「ゆいごん」と言ったりしていますし、
最近は法律家間でも「ゆいごん」を使っています。

 

2018年12月10日

ブログ始めました

相続・遺言、成年後見・家族信託などの民事法務に関して、一般の方でも分かりやすい内容を目指して参ります。

ご覧いただいた方に少しでもお役に立てますように。

2018年12月10日